Skip to content

第23回 ミニレクチャー

題 目:「ゲーテの色彩論」

講 師:大録慈

日 時:2026年6月30日(火) 19:00-20:30

場 所:オンライン

概 要:

 ユング派心理療法の中で、「色」が役割を持つ場面は多くあります。
 描画で使われる色、夢に出てくる色など、「色」はケースの展開の中で、心に呼び起こされたものを私達に伝えてくる、重要なチャンネルの一つです。

 文豪ゲーテにとっても、「色」は自然の神秘が人間の器官や心と直結する、重要な領域でした。ゲーテは若い頃から文学と並行して自然科学研究に打ち込んでいましたが、その中でも「色彩論」は20年以上に渡り執筆され、「ファウスト」に次ぐゲーテのもう一つのライフワークと言われます。

 西洋では長らくアリストテレスに代表される色彩観が影響力を持ち、そこでは色は「光」の中に「闇」が混じり合うことによって、生み出されると考えられていました。しかし17世紀後半のニュートンのプリズム実験以降、色は光の波長に還元され、他の自然科学領域と同様に世界の数量化・機械論化を進める一端となりました。ゲーテはこの流れに異を唱え、人間にとって色彩は常に「補色」という対立物を持つこと、また色彩は「青(闇の側)」と「黄色(光の側)」という分極性を持ち、この二つの極から生み出される「高昇」という運動によって、最深最高の色である「深紅」に向かおうとすることを論じ、色彩が決して単純な定量的な現象ではない事を主張しました。
 ゲーテが観察と実験から導いた論証は、ニュートン光学を覆すものにはなりませんでしたが、人間の感覚を反映した色彩論としては高く評価され、現代の美術教育などに影響を与えています。

 ゲーテは近代科学の方法を高く評価しながらも、押し寄せる機械論的世界観の中で、自然の質的な豊かさや神秘性を見失うまいと葛藤していたように思います。
この時代のゲーテの奮闘を知ることで、後に続くユングの思想を理解する一助となればと考えます。
 また当日は、上記の内容に限らず、臨床場面で出会う「色」についてなども含め、自由に話し合いができればと思います。